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浦木隆太

ご挨拶

令和7年10月より、東京大学国際高等研究所新世代感染症センター(UTOPIA) GMP教育分野の分野長を拝命しました。

2009年に経験した新型インフルエンザのパンデミック、そしてCOVID-19による世界的なパンデミックを通じて、ウイルスという存在を以前よりも身近に、時に脅威として強く意識する人が増えたのではないかと思います。私自身もこれまで、これらの感染症を引き起こすウイルスを研究対象として研究を進めてきました。特に、小さな粒子であるウイルスがなぜ私たちヒトに病気を引き起こし、ときに命に関わるほどの病原性を示すのか、そしてそれに対して私たちの身体はどのように応答し、いかに対抗できるのか──その問いに強い興味を抱いています。

これまでの研究では、RNAを遺伝子としてもつRNAウイルスを中心に、インフルエンザウイルス、ジカウイルス、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を対象としてきました。ウイルスは自らの力だけでは増殖できず、必ずヒトや動物の細胞という“宿主”のシステムを借りて増殖します。その過程にはウイルスに共通する仕組みもあれば、ウイルス特有の巧妙な戦略もあります。これらを理解することで、感染がどのように成立し、どのように病気へとつながるのかを明らかにすることができます。

私たちの研究室では、この大きな問いをさらに掘り下げるため、以下の3つの研究の柱を掲げています(2025年12月現在)。

  1. Vector-ImmunoVirology(ベクター免疫ウイルス学)
    ウイルス × 宿主免疫 × 媒介生物を一体的にとらえ、従来の枠を超えた感染症対策を開発する新しい研究コンセプトです。蚊などの媒介動物が持つ要因を分子レベルで解析し、感染成立や病態への影響を明らかにします。
  2. 免疫刷り込みと感染・ワクチン応答
    ヒトや動物モデルを用いて、過去のウイルス感染や接種歴による「免疫刷り込み」がワクチン効果や感染後の免疫応答、長期免疫などにどのように影響するか、そのメカニズムを解析します。
  3. 環境因子によるウイルス感染病態・免疫応答の変化
    栄養状態、体内時計(概日リズム)、ストレスなどの環境因子が、ワクチン応答やウイルス感染後の病態に及ぼす影響を多角的に解明します。

加えて、私たちの研究室では「GMP教育」にも力を入れています。新しいワクチンや治療薬を社会に届けるためには、研究成果を基盤としつつも、実際に臨床応用に耐えうる品質・安全性を担保する「GMP(Good Manufacturing Practice)」の知識と実践が不可欠です。基礎研究と応用研究をつなぎ、将来の治験薬・ワクチン開発を支える人材を育成することも、私たちの大きな使命のひとつです。

東京大学UTOPIAには、ウイルス学、免疫学、疫学、臨床研究など多彩な分野で世界的に活躍する研究者が集結しており、研究環境も極めて充実しています。このような恵まれた環境の中でウイルスと真正面から向き合えることの喜びを噛み締めつつ、学問の発展に寄与すると同時に、次世代の治療法・予防法の開発や、それに携わる人材の育成にも貢献していきたいと考えています。

パンデミックの時代を経験した今だからこそ、ウイルス研究とGMP教育の意義はますます大きくなっています。私たちの研究室では、未知のウイルスに立ち向かうための科学的基盤を築くとともに、その挑戦を共に担う仲間を求めています。

2025年12月

経歴

  • 2006.3 ラサール高校 卒業
  • 2010.3 東京大学農学部動物生命システム科学専修 卒業
  • 2015.3 東京大学新領域創成科学研究科メディカルゲノム専攻 修了 博士取得(生命科学)
  • 2015.4-2015.6 東京大学医科学研究所 特任研究員
  • 2015.7-2017.6 Yale University School of Medicine/HHMI postdoctoral associate
  • 2017.7-2019.2 Yale University School of Medicine/HHMI postdoctoral fellow (海外特別研究員)
  • 2019.3-2021.3 名古屋市立大学医薬学総合研究院(医学) 助教
  • 2021.4-2024.7 国立研究開発法人国立国際医療研究センター 研究所 上級研究員
  • 2023.11-2025.7 東京大学 国際高等研究所 新世代感染症センター 客員准教授
  • 2024.8-2025.3 国立研究開発法人国立国際医療研究センター 研究所 主任研究員
  • 2025.4-2025.7 国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所 主任研究員
  • 2025.8-現在 東京大学 国際高等研究所 新世代感染症センター 独立准教授

受賞歴

  • 2019
    • 第190回日仏生物学会 最優秀口頭発表賞
    • 名古屋市立大学医学会 名古屋市立大学医学会奨励賞
  • 2023
    • 第51回日本免疫学会学術集会 ベストプレゼンテーション賞
    • 国立国際医療研究センター 第15回箱根山賞
    • 日本ウイルス学会 杉浦奨励賞
  • 2024
    • 令和6年度 文部科学大臣表彰若手科学者賞
  • 2025
    • 第20回(2025年度)日本免疫学会研究奨励賞

東京大学 新世代感染症センター

GMP教育分野 浦木研究室

〒108-8639 東京都港区白金台4-6-1

Department of GMP Education and ImmunoVirology, URAKI Lab

The University of Tokyo Pandemic Preparedness
Infection and Advanced Research

4-6-1 Shirokanedai, Minato-ku, Tokyo 108-8639 Japan

Copyright © Uraki Lab
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